JPYCがもたらす未来と日本のWeb3
円建てステーブルコインJPYC|後編
これまで2回にわたって、日本円に連動するステーブルコイン「JPYC」 について見てきました。
前編では「JPYCって何?生活にどう役立つの?」
中編では「世界で使われるUSDTとの違い」を整理しました。
そして今回は、
JPYCが日本のWeb3ビジネス、そして今後の私たちに何をもたらすのか を探っていきましょう!
ステーブルコイン?電子決済手段?
まず最初に整理しておきましょう。
ニュースやSNSでは、JPYCは「日本円のステーブルコイン」と紹介されることが多いです。
実際に 1 JPYC = 1円の価値を持つコイン なので、そう呼ばれるのも自然です。
ただし、日本の法律「資金決済法」では、円建てステーブルコインは「暗号資産」とは区別され、電子決済手段 として明確に規定されています。
つまりJPYCは、
- 一般的には「日本円のステーブルコイン」
- 法律上は「電子決済手段」
という2つの呼ばれ方をされています。
この違いを押さえておくと、JPYCの立ち位置がよりわかりやすくなります。
発行のしくみと「安心の裏付け」
「民間が発行する日本円のコインって、本当に大丈夫なの?」と思う方も多いはず。
JPYCの仕組みはシンプルです。
- JPYC株式会社が、ユーザーから日本円を受け取ると、その分のJPYCを発行
- 逆にJPYCを返せば、同じ額の日本円を払い戻す(償還)
- 受け取った円は 預金や国債などの安全性の高い資産 で保有
- その利息がJPYC社の収益源になる

つまり、発行されたJPYCの裏には必ず「円や国債」が存在しています。
これは「銀行にお金を預けると、銀行が国債で運用している」イメージに近く、ユーザーから見れば安心して使える仕組みです。
JPYC X プラットフォームの特徴
JPYCを使うための専用サービスが JPYC X です。
- JPYCの発行・償還の手数料は無料
- かかるのは送金時のガス代(処理代)のみ
- 安ければ 1円未満のガス代 で送金できることも
また、JPYCは Ethereum(イーサリアム)・Avalanche(アバランチ)・Polygon(ポリゴン) の3つのブロックチェーンで発行予定。
これは「インターネット上にお金の通るルートが3本ある」と考えるとイメージしやすいでしょう。
利用者は速さやコストに応じて自由に選べるようになります。
Web3ビジネスで広がるチャンス
JPYCの普及は、日本のWeb3ビジネスに新しい可能性が生まれます。
- NFTやブロックチェーンゲーム
JPYCで決済できれば、暗号資産への両替が不要に。 - DAOやクラウドファンディング
海外との資金のやり取りを、JPYCベースでスムーズに。 - クリエイターやフリーランス
海外からの報酬を「JPYCのまま受け取れる」ように。

これまで「ドルや暗号資産を経由しないといけない」ケースが多かった場面で、
JPYCそのまま使えるのは大きな変化です。
さらに、日本では規制が厳しいため、暗号資産を使ったビジネスは慎重になりがちです。
その中で、金融庁に認められたJPYCは、安心して利用できる「日本らしいWeb3の入り口」として、NFTチケットやデジタル会員証、コミュニティ内でのやりとりなど、さまざまなWeb3サービスと組み合わせられる多彩な可能性を秘めています。
海外送金の変化
銀行を通じた国際送金は「数日+高い手数料」がかかるのが当たり前でした。
JPYCなら、送金は 数分+数円 にまで縮まる可能性があります。
特に海外への個人送金や企業の国際取引では、大きなメリットになるでしょう。
さらに「ドルを経由せず、日本円(JPYC)のまま直接送金できる」ことは、利用者にとって新しい選択肢となり、よりスピーディーでコスト効率の良い国際送金につながるでしょう。
私たちの生活にどう関わる?
JPYCは「ステーブルコイン」として広く紹介されつつ、法律上は「電子決済手段」として正式に認められた、新しい日本円のかたちです。
将来的には、DeFi(分散型金融) を使って「JPYCを預けると利息がつく」ような仕組みに広がっていく可能性もあります。
これは、銀行にお金を預けて利息を受け取るのと似ていますが、もっとオープンで自由な形。
JPYCが普及すれば、日本円を使った金融サービスの新しい形が次々と生まれてくるかもしれません。
「お金がもっと自由に、もっと身近に」
JPYCは、そんな未来を現実にしていく可能性をもった存在なのです。