仮想通貨の誕生(世界とつながるビットコイン)_後編
現代と未来のお金シリーズ|第3回
なぜ今、銀行や企業が注目するのか?
前回は、ビットコインがどのように誕生し、どんな仕組みで動いているのかを見てきました。今回は、そのビットコインが今どう世界に広がり、どんな未来を描いているのかをお話しします。
投資対象化 — 現物ETF承認のインパクト
2024年、アメリカでビットコイン現物ETFが承認されました。
これは、証券会社の口座から株や投資信託と同じようにビットコインに投資できる仕組みです。
これまでは、ビットコインを保有したり投資したりするためには、仮想通貨取引所で口座開設や、ウォレットや秘密鍵(パスワード)の管理といったセキュリティ対策も自分で行う必要がありました。
でもETFなら、これらを意識せず「株を買う感覚」で投資できます。
これにより、
- 大手の機関投資家が参入しやすくなる
- これまで仮想通貨に興味がなかった人も手を出しやすくなる
という流れが生まれています。
ビットコインが「一部の人の投機対象」から「みんなの投資対象」へとシフトしつつあるのです。
新しい技術 — Ordinal(BTC版NFT)の登場
最近話題になっているのが、Ordinal(オーディナル)という新しい技術です。
これは、ビットコインのブロックチェーンに直接画像や文章などのデータを刻み込む方法。
「NFT」と聞くとイーサリアムのイメージが強いですが、Ordinalはビットコイン版NFTとも言えます。

イーサリアムNFTと違い、ビットコインの高いセキュリティと歴史的価値が背景にあるため、希少性が際立ちます。 アート作品やデジタルコレクションはもちろん、将来的には契約書や証明書の発行にも使える可能性があります。
つまり「ビットコインはただの通貨じゃない」ということを示す技術なんですね。
世界と日本の規制・法整備の動き
ビットコインが広がる一方で、各国は規制やルール作りを急いでいます。
- アメリカ・EU:マネーロンダリング対策、取引所のライセンス制、税制の明確化など
- 日本:取引所の登録制度や税制整備
日本では、2023年6月に法人税制の一部改正があり、企業が自社で発行した暗号資産(トークン)を長期保有しやすくなりました。
また、個人向けにも「分離課税」や「損失繰越控除」の導入が議論されており、これが実現すれば投資環境は大きく改善されます。
税制の変化や最新の議論については、こちらの記事でまとめています。
暗号資産の税金、どうなってる? 知っておきたい「税率の壁」と今後の変化
仮想通貨が『信用』になる未来像
かつては「怪しい」「一部のオタクの遊び」と思われていたビットコインですが、今や銀行や大企業が保有する時代になりました。
- 海外では航空券やホテルの決済にビットコインが使える例も
- 国際送金やオンライン決済でも採用事例が増加
- 企業の財務資産として保有する動きも拡大

そして将来は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)と共存する形で、日常的に使われる可能性もあります。
もしそうなれば、「国が発行したお金」だけが信用の基準ではなくなる時代が来るかもしれません。
ビットコインの「もしも」と「落とし穴」
もし2010年に1万円分のビットコインを買っていたら?
2010年当初のビットコイン価格は、1BTC=1円未満でした。
仮に1円の価格で、1万円分の1万BTCを買っていたとすると、
それが2025年8月の時点では…1千億円を超える価値に。まさに人生がひっくり返るレベルです。
秘密鍵をなくすと…?
イギリスには、ビットコインの秘密鍵が入ったHDDを誤って捨ててしまい、
ゴミ埋立地を探し続けている男性がいます。
ビットコインは、銀行のように「パスワードの再発行」はできません。
秘密鍵を失えば、その資産は永遠に取り出せないのです。
大きなチャンスと同時に、管理の厳しさも背負うのがビットコイン。
「便利さ」と「自己責任」のバランスが問われる資産なんですね。
進化し続けるビットコイン
ビットコインは、誕生から15年以上経った今も進化を続けています。
投資対象としての成熟、新しい技術の登場、規制の整備、そして「信用」の形の変化。
それは、世界中の人々がお金と向き合う方法を変えていく可能性を秘めています。
次回は「中央銀行デジタル通貨(CBDC)の狙い」をテーマに、国が発行するデジタル通貨とビットコインの関係についてお話しします。
*このブログでは暗号資産を敢えて最初の名称である仮想通貨と表現しています。