私たちが使うお金はどうなる?中央銀行デジタル通貨(CBDC)の狙い
現代と未来のお金シリーズ|第4回
なぜ今、CBDCが話題なのか?
世界中の中央銀行が、次々と「CBDC(Central Bank Digital Currency)」の研究や実証実験を始めています。
「え、もうスマホ決済や電子マネーを使ってるよ?」と思うかもしれませんが、CBDCはそれらとは全く立ち位置が違います。
これは単なる支払いツールではなく、『お金の仕組みそのもの』を変える可能性を持った存在なのです。
CBDCとは?
CBDCは中央銀行が直接発行するデジタル形式の法定通貨です。
日本なら日本銀行、アメリカならFRB(連邦準備制度理事会)が発行します。
ポイントは「国家が保証するお金」ということ。
種類は大きく2つ
- リテール型:私たち一般市民や企業が直接使えるタイプ
- ホールセール型:銀行間の取引に使う専門的なタイプ
CBDCの設計では、『ブロックチェーンを含む分散型台帳技術(DLT)』を活用する案が検討されることが多くあります。
ただし、性能や機密性を優先する中央銀行の中には、分散型ではなく『中央集権型システム』を採用するケースもあります。
違いを比較(暗号資産・電子マネーとの違い)
種類 | 発行者 | 価値の保証 | 価格変動 | 例 |
CBDC | 中央銀行 | 国が保証 | 基本的に変動しない | デジタル円(仮) |
暗号資産 | 民間・分散型 | 保証なし(市場次第) | 大きく変動 | ビットコイン、イーサリアム |
電子マネー | 民間企業 | 発行企業が保証 | 変動しない | Suica、PayPay残高 |
つまり、CBDCは「国が出すデジタル現金」。
暗号資産は投資や送金に強く、電子マネーは企業のサービス内で便利に使えるけれど、CBDCは国家レベルでの安定性があります。
中央銀行がCBDCを発行する目的
CBDCの狙いは一つではありません。代表的な目的は
- 現金利用の減少に対応
- 決済のスピードアップとコスト削減
- 銀行口座を持たない人への金融アクセス拡大(金融包摂)
- 偽造・マネーロンダリング防止
- 民間の暗号資産やステーブルコインへの対抗策
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世界の動き
- 中国:すでに「デジタル人民元」を試験運用
- EU:デジタルユーロ計画進行中
- アメリカ:研究段階
- 日本:日本銀行が実証実験中
銀行や企業が注目する理由
CBDCには、こんな実用的メリットがあります。
例えば、海外送金が数日かかるところが数秒で完了したり、大口取引や貿易の決済コストを大幅に削減できる可能性があります。
さらにスマート契約(スマートコントラクト)と組み合わせれば、条件付き自動決済など新しい金融サービスが生まれます。
CBDCへの期待と懸念
CBDCには、決済インフラの進化や経済の活性化といった期待があります。
一方で、プライバシー監視の強化やサイバー攻撃の標的化といった懸念も指摘されています。
これらのバランスをどう取るかが、各国の課題です。
CBDCは、ただのお金のデジタル版ではなく、社会の経済基盤を作り変える可能性を持っています。
次回は、このCBDCが進んだ未来に「お金はなくなる?」という社会像について見ていきます。