なぜ投資は「元本保証」をされないのか?──“安心”より危険なサインの正体
はじめに
「元本保証」って聞くと、なんだか安心しますよね。
「損しないなら、やってみてもいいかも」と思うかもしれません。
しかし、正規の投資では「元本保証」はありえません。
なぜなら、投資とは「リスク(不確実さ)」を引き受けることでリターン(利益)を得る仕組みだからです。
この記事では、「なぜ投資は元本保証されないのか?」をやさしく解説しながら、
安全な投資と危険な詐欺を見分ける知識をお伝えします。
投資とは?「お金に働いてもらう」仕組みを知ろう
投資とは、あなたのお金を使って企業や国の活動を応援し、その成果を分けてもらう仕組みです。
たとえば:
- 株式 → 会社に出資し、その成長で配当や株価上昇を得る。
- 債券 → 国や企業にお金を貸し、利息を受け取る。
- 投資信託 → 専門家(運用会社)があなたの代わりに株や債券を選んで運用する金融商品。
つまり投資は、お金が社会の中で働く仕組み。
あなたの代わりに「お金が稼ぎに出る」と考えると、少し親しみやすいですね。
他にも、不動産投資や外貨・金などの実物資産への投資もあります。
形は違っても、「お金を使って価値を生み出し、その成果を得る」という点では同じです。
つまり、どんな投資であってもリターンとリスクはセットという共通のルールがあります。

銀行預金との違い:「保証」があるか、ないか
投資と混同されやすいのが銀行預金です。
どちらも「お金を預ける」ように見えますが、仕組みはまったく違います。
| 項目 | 銀行預金 | 投資 |
| お金の行き先 | 銀行が企業や個人に貸す | 企業・国・市場などに直接投資 |
| 利息・利益 | あらかじめ決まっている(低い) | 運用成果で変動する(高くも低くもなる) |
| 保証 | 預金保険制度で元本と利息を合わせて1,000万円まで保証 | 投資家保護基金は証券会社が破綻した場合のみ補償(上限1,000万円)。投資先企業の倒産や運用損失は補償対象外。 |
銀行預金は「国が守る仕組み」がありますが、
投資は「あなた自身がリスクを取る」仕組みです。
元本が減る理由:「3つのリスクの正体」
投資でお金が減る可能性をつくるのが、『リスク(=不確実さ)』です。
ここでは代表的な3つのリスクを紹介します。
- 市場リスク
景気や金利、為替などの変動によって価格が上下すること。
→ 例:株価が下がる、為替が円高になる、など。 - 信用リスク
投資先の企業や国が倒産・デフォルトするリスク。
→ 例:投資したお金が返ってこない、債券が紙くずになる。 - インフレリスク
物価が上がって、お金の価値が下がる『(実質的な資産が減る)』リスク。
→ 例:10年前の100万円の価値と、今の100万円の価値は違う。
ポイント:
リスクとは「危険」ではなく、「結果が確実ではない」ということ。
これを理解すれば、怖がるよりもコントロールする力が身につきます。
なぜ元本は「保証できない」のか?
投資では、リスクとリターンは表裏一体です。
「リスクを取るからこそ、リターン(利益)が得られる」のです。
もし誰かが「元本を保証します」と言ったら、そのリスクは誰が負うのでしょう?
そう、誰かがあなたの代わりにリスクを引き受けなければならないのです。
そのためには、
- 「保証のためのコスト」がかかり、
- 結果的にリターン(利益)がほぼゼロになります。
「元本保証」を謳う商品が存在しない理由(法規制)
金融商品取引法では、「元本保証」を表示したり説明したりすることが禁止されています。
これは、投資家が「安全」と誤解して被害にあうのを防ぐためのルールです。
つまり、「元本保証」という言葉を使う時点で、
その業者は正規の金融機関ではない可能性が高いということ。
法律があなたの資産を守ろうとしている、という視点も覚えておきましょう。
【危険信号】「元本保証」をうたう投資は詐欺の可能性大
もし、「元本保証で年利10%」などと言われたら、ほぼ間違いなく詐欺です。
そんなにおいしい話が本当にあれば、
わざわざ他人に勧める必要はありませんよね。
典型的なのが、『ポンジ・スキーム(投資詐欺の一種)』です。
新しい投資家のお金を使って、以前の投資家に配当を出して「もうかっているように見せかける」手口です。
最初のうちはお金が戻ってくるため、「本当に儲かる」と信じてしまう人も多いですが、
最終的には必ず破綻します。

正規の金融機関では、「元本保証」は法律で禁止されています。
この言葉を聞いたら、まず「なぜ保証できるの?」と冷静に疑うことが大切です。
まとめ:元本保証がなくても資産を守る3つの知恵
投資の世界では、「保証」に頼るよりも、「リスクをコントロールする力」が大切です。
資産を守りながら増やすための3つの原則を覚えておきましょう。
- 長期投資:時間をかけることで価格の波を平均化。
- 積立投資:毎月コツコツ買うことでタイミングを分散。
- 分散投資:資産・地域・通貨を分けてリスクを減らす。
これらを続けることで、「リスクは怖い」から「リスクを味方につける」へと意識が変わります。
最後に
「元本保証」がないからこそ、投資は自由で可能性がある世界です。
怖がるのではなく、しくみを理解して上手に付き合うこと。
それが、「自分のお金を守り、育てる」第一歩です。


