海外送金を伴う収納代行への規制
現在、日本の金融庁は、オンラインカジノや海外FX業者への送金に利用される収納代行業者に対して、規制を強化しようとしています。
海外のFXブローカーを利用したいと考えている投資家の皆さまにとっては、利便性にブレーキがかかる可能性がある話しとなりそうですが、この規制強化の理由や目的を確認しておきましょう。
規制強化の背景と目的
利用者保護の観点
- オンラインカジノや無登録の海外FX業者は、日本の法律上違法であるか、利用者にとってリスクが高い取引となる場合があります。これらの業者への送金に収納代行が利用されることで、利用者が詐欺やトラブルに巻き込まれるケースが増加しています。
- 収納代行業者が資金移動業の登録をしていない場合、利用者の資金が適切に保護されないリスクがあります(例えば、収納代行業者の破綻時に資金が保全されないなど)。
マネー・ローンダリング(資金洗浄)対策
- 違法なオンラインカジノや詐欺事案などにおいて、収納代行業者がマネー・ローンダリングの経路として悪用される事例が指摘されています。金融安定理事会(FSB)などの国際的な機関も、クロスボーダー送金サービスにおけるマネー・ローンダリングリスクへの対応を求めています。
現行法の抜け穴の解消:
- 従来の解釈では、収納代行は必ずしも「為替取引」に該当せず、資金移動業の登録が不要な場合がありました。しかし、実質的には銀行や資金移動業者の行う国際送金と同様の機能を有していることから、現行の資金決済法ではカバーしきれない部分がありました。
金融庁の具体的な動き
金融庁は、金融審議会のワーキング・グループでの議論を経て、資金決済に関する法律の一部を改正する動きを進めています。主な改正内容は以下の通りです。
クロスボーダー収納代行への資金移動業規制の適用:
これまで規制対象外とされてきた「クロスボーダー収納代行」のうち、特に以下の類型については、原則として為替取引に関する規制を適用し、資金移動業の登録を義務付ける方針です。
- 海外オンラインカジノの賭け金の収納代行
- 海外投資事案(無登録金融商品取引業者などによる詐欺案件を含む)の収納代行
- 海外EC取引業者からの委託を受け、決済だけに関わる収納代行

これらの行為を行う事業者は、資金移動業の登録がなければ、無登録業者として取り締まりの対象となります。
利用者資金の保護義務の明確化
資金移動業者として登録された場合、利用者の資金を適切に分別管理し、履行保証金を供託するなどの義務が課せられます。これにより、収納代行業者の破綻時などにおける利用者資金の保全が図られます。
国際的な要請への対応

金融安定理事会(FSB)が公表した「クロスボーダー送金サービスを提供する銀行・ノンバンクの規制・監督に係る勧告」も踏まえ、国際的なマネー・ローンダリング対策の強化に整合する形で、規制の整備が進められています。
現状と今後の見通し
- 法改正の進行: 資金決済法の改正案はすでに議論されており、近いうちに施行される見込みです。施行日時点でクロスボーダー収納代行を行っている事業者には、一定の期間内に資金移動業の登録申請を行う猶予が与えられる可能性があります。
- 金融機関やカード会社による対応: すでにエポスカードなど一部の金融機関やクレジットカード会社では、暗号資産取引、外国為替取引(FX)、オンラインカジノの利用を原則として断る動きが出てきており、自主的な規制も進んでいます。
- 注意喚起の強化: 金融庁や消費者庁、警察庁は、引き続きオンラインカジノや無登録の海外FX業者への利用について、利用者への注意喚起を強化しています。日本国内からオンラインカジノを利用することは犯罪である旨を明確に示し、利用しないよう呼びかけています。
このように、金融庁は、オンラインカジノや海外FX業者への不正な送金経路として利用されてきた収納代行業者に対し、資金移動業としての規制を適用することで、利用者保護とマネー・ローンダリング対策を強化しようとしています。