紙なのにお金? 信用が価値を生んだ紙幣の力

お金の始まりと進化|第3回

「紙のお金って、最初は信用されてなかったんだよね。」

今では当たり前の「紙幣」。でもその誕生には「重くてかさばる金属貨幣」を超える必要がありました。
紙切れに価値を持たせるには、ただの素材としての価値以上に、「信用」という魔法が必要だったのです。

今回は、そんな紙幣の始まりと「信用の力」についてたどっていきましょう。

世界初の紙幣:宋の「交子(こうし)」

紙幣の歴史が始まったのは、10〜11世紀の中国・宋の時代。 当時、鉄貨や銅貨が主に使われていましたが、その重さと量の多さが大きな問題に。

そんな中、登場したのが「交子(こうし)」と呼ばれる紙の手形。最初は商人たちが発行していたもので、預けたお金と引き換えに使う引換券のようなものでした。

しかしその便利さから急速に広まり、政府が管理するように。 これが世界で最初の「国家による紙幣発行」とされています。

📌 交子は便利だった反面、乱発によりインフレも引き起こしたと言われています

ヨーロッパでの発展:手形から銀行紙幣へ

ヨーロッパでは、13〜17世紀にかけて、遠隔地での貿易に使われる「為替手形」が登場します。

金や銀の持ち運びがリスクだったため、信頼できる商人の「手形」で取引が行われるようになったのです。
これがやがて銀行業へと発展し、1661年にはスウェーデンの民間銀行「ストックホルム銀行」がヨーロッパ初の紙幣を発行します。

これは金の引換証として使われましたが、金の備蓄不足から信用を失い、やがて銀行は破綻。
その教訓をもとに、1668年には世界初の中央銀行「スウェーデン王立銀行(リクスバンク)」が設立され、国家が通貨制度を担う基盤が整っていくことになります。

信用が価値を生む「紙」へ

紙幣が真に『お金』となるには、「その紙を誰が発行したのか」が重要になります。
つまり『発行者への信用』こそが、紙幣の価値を支える土台となったのです。

やがて各国では「中央銀行」や「国家」が紙幣を発行するようになり、一定の信頼と統制が生まれます。
この頃から、「金本位制」と呼ばれる制度が一般化します。
1枚の紙幣は、一定量の金と交換できるという安心感が生まれました。

日本の紙幣のはじまりと、信頼の構築

日本でも紙幣の歴史は古く、江戸時代には各地の藩が独自に「藩札(はんさつ)」を発行していました。

これはローカルな信用を背景にした紙幣のようなもので、地域経済を支える役割を担っていました。

明治時代に入り、政府は「太政官札(だじょうかんさつ)」を発行して全国的な統一紙幣を目指しますが、 初期には偽札や価値の信頼性への不安もあり、なかなか信用を得られなかったようです。

🔍 そのころの日本は?
江戸の商人たちは、藩ごとの信用に基づいた藩札を使い分けており、「あの藩の札は信用できる」「こっちは価値が下がるかも」など情報と信頼が鍵になっていました。

紙幣が生んだ“信用の時代”とその先へ

紙でできたお金は、物理的な価値ではなく『信用』という目に見えない力でその価値を保っています。
この「信用の力」は、やがて中央銀行や政府が担うようになり、現代の通貨制度の基盤となっていきます。

次回はいよいよ、その「信用」を支える舞台へ。
「銀行と中央銀行の登場」
お金はどこで生まれ、どうやって動くようになったのか? その仕組みに迫ります!

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