贈与の110万円、実は『名義預金』かも?7年持ち戻しルールに勝つための最強エビデンス術
他人事じゃない相続・贈与_その5
「贈与は年間110万円までなら非課税だから大丈夫」
このルール、聞いたことがある人は多いと思います。
だからこそ
- 毎年コツコツ子どもに渡している
- 生活費や教育費として渡している
こうした「よくある行動」が、実は一番リスクになりやすい状態になっています。
なぜかというと、今は
「本当に贈与だったのか?」
ここをかなり厳しく見られるようになっているからです。
なお、生活費や教育費は「必要な都度支払う分」は原則として贈与税の対象外です。
一方で、まとめて渡して貯金に回すようなケースは贈与とみなされる可能性があるため注意が必要です。
税務署は「善意」を信じない。恐怖の『名義預金』とは?
ここで出てくるのが「名義預金」という考え方です。
これは
名義は子どもでも、実質は親のお金と判断される状態
のことを指します。
例えばこんなケース。
親が子どもの口座を作って、毎年お金を入れている。
でも通帳も印鑑も親が管理していて、子どもはほとんど関与していない。
この場合、税務署の見方はシンプルです。
「それは親の財産ですよね」
つまり、贈与は成立していないと判断されます。
ここで大事なのは、「気持ち」ではなく「状態」で見られるということです。
判断基準はひとつ。
もらった人が、そのお金を自由に使える状態だったか
この一点です。
親としては「将来のために」と思っていても、
本人が使えない・知らない状態であれば、贈与とは見なされにくい。
このズレが、後から大きな差になります。
2024年改正で変わった「証拠」の価値
ここに制度の変更が重なっています。
2024年の改正で、亡くなる前の贈与は
最大7年間さかのぼって相続財産に加算される
ようになりました。
ここでよく出てくるのが
「じゃあ7年以上前に渡しておけばいいよね」
という考え方。
これは間違いではありませんが、それだけでは不十分です。
なぜなら
「その時点で贈与が成立していた証拠」がなければ意味がないからです。
例えば
- 昔から渡していたつもり
- でも証拠がない
- 名義預金と判断される
こうなると
そもそも贈与がなかった扱いになる可能性があります。
つまり今は
「いつ渡したか」より「どう残しているか」が重要な時代です。

最強の盾を作る!3つのエビデンス術
ではどうするか?
特別なテクニックは必要ありません。
誰が見ても贈与と分かる形にする
これだけです。
そのために現実的で効果の高い方法が、この3つです。
① 銀行振込で渡す
まず一番シンプルで効果が高いのがこれです。
銀行振込にすると
- いつ
- 誰から誰へ
- いくら
という記録がそのまま残ります。
つまり銀行が第三者の証人になるという状態です。
逆に現金手渡しだと
「本当に渡したのか?」を証明しづらくなります。
日常的にやるなら、ここが最優先です。
② 贈与契約書を残す
次に、「あげた・もらった」という意思を形にします。
といっても難しいものではなく
- 日付
- 金額
- 誰から誰へ
この3点をシンプルに書いておくだけでも十分意味があります。
ここで重要なのは
「その年ごとにちゃんと贈与している」ことが分かることです。
加えて、
受贈者(もらう側)も自筆で署名し、自分の印鑑を押すこと
を徹底します(親が代筆・押印していると、名義預金と疑われやすくなります)。
110万円の範囲であれば、過度に形式を整えるよりも
毎年その都度、贈与の意思決定をして記録に残すこと
の方が実務的には重要です。
※毎年同じ時期に同額を機械的に続けると
あらかじめ複数年にわたる贈与の約束があると『定期贈与』とみなされる可能性があります。
時期や金額に一定の変化を持たせるなどの工夫も有効です。
③ 普段使いの口座に入れる
最後に見落とされがちなのがここです。
振り込む先の口座が
本人が実際に使っている口座かどうか
はかなり見られます。
例えば
- 作っただけで使っていない口座
- 親が管理している口座
こういった場合は、名義預金と疑われやすくなります。
一方で
- 給与が入る
- 生活費で使っている
ような口座であれば
実際に本人が使っているお金
と判断されやすくなります。

まとめ
ここまでを整理すると
- 110万円の非課税は「無条件」ではない
- 贈与は成立しているかどうかがすべて
- その判断は証拠で決まる
というシンプルな話です。
そして大事なのは
知識は「攻め」ではなく「守り」
という視点です。
最後に
エビデンスという言葉は少し堅く聞こえるかもしれません。
でも実際には『将来、家族を守るための準備』です。
「あの時ちゃんとやってくれていたんだね」
そう思ってもらえる形を残しておく。
それが、今できる一番現実的な相続対策です。

